「新傾向」「新学力観」とは何か?

きたるべき大学入試制度改革にともない、小学校や中学校の問題でも、いわゆる「新傾向」「新学力観」と呼ばれる種類の問題が増えてきました。

当然、中学生の最後の関門である公立高校入試でもこれらの種の問題が主流になってきています。

 

ところで、学校の先生や塾などの民間の教育機関はどの程度この「新傾向」「新学力観」について理解しているのでしょうか?

 

残念ながら「難しい応用問題が増えた。」「より深い思考力と判断力が求められるようになった。」「表現力が重視される。」、この程度の理解でしょう。

 

間違ってはいませんが、本質にたどりついていません。

「新傾向」「新学力観」とは何か?

ここですべてを明らかにします。

これから受験を迎える中学3年生だけではなく、中学1・2年生あるいは小学生の保護者様も必見です!!


もったいぶらずに、先に結論を言います。

「新傾向」「新学力観」とは何か?

それは・・・

 

 

大手企業の新入社員が、新人研修で勉強するようなことです。

 

具体例をみてみましょう

 

以下、平成28年度静岡県公立高校入試 英語からの引用です。


4.太郎(Taro)の町では伝統的な祭りがおこなわれている。そこで、太郎は、日本に留学に来ている友人のBobに、昔ながらの日本にふれることができるので、町の祭りを一緒に見に行こうと誘うことにした。あなたが太郎なら、赤字で示した部分の内容を、どのようにボブに伝えるか。伝える言葉を、英語で書きなさい。

(注.実際にはアンダーラインが引いてあり「下線部について」ですが、わかりやすいように赤字で示しました。)


むずかしそうですね。今の入試ってこういう問題が出るんですよ。

でもこの問題、実は英語の問題ではありません。

 

そのことにふれる前に、この問題について少し考えてみましょう。

 文数指定(「1文で答えよ」、とか、「答えは何文になってもよい」など)がありませんよね。

これは今では当たり前になっていて、何文になってもよいといことです。

 

ここで1つ誤解を解いておく必要があります。

 

1つの長い文で書けた方がえらい、なんてことはまったくありません。

多くの指導の現場で、「無理に1つの文にすることないんだよ。いくつか簡単な文に分ければいいんだよ。」という指導がされていますが、まったくの認識不足です。

 

「いくつかの文に分けてもいい」のではありません。

「いくつかの文に分けなければいけない」のです。

 

大学入試の話になりますが、国公立大学2次試験や上位私立大試験などで自由英作文の出題はますます増えています。

その際心がけるべきこととして「旧情報(すでに分かっている情報)から、新情報(これから伝える情報)へ。1つの文にテーマは1つずつ。」と、一流の教育の現場ほどこういう指導がなされます。

ですから、トップ高を受験するからといって長い文の方がいい、なんてことはありません。むしろ逆です。

トップ高ほど大学入試対策として、このような指導が行われています。

 

いくつかの文に分けるのは当然です。

この問題の本質(この問題で問われていること)は・・・

伝える内容の順番です。

みなさんも、いっしょに少し考えてみてください。

先ほどの「お祭りに行こう」という文についてです。

もちろん英語でなく、日本語で考えればよいです。

 

英語の問題と考えないでください。

新入社員になったつもりで、新人研修で「上記のような内容をお客様に伝えるとき、どのような順番で話を伝えればよいか?」という課題が出されたと思って、考えてみてください。

特に大切なのは、「一番最初に何を伝えるか?」です。

問題をもう1度、のせます。


4.太郎(Taro)の町では伝統的な祭りがおこなわれている。そこで、太郎は、日本に留学に来ている友人のBobに、昔ながらの日本にふれることができるので、町の祭りを一緒に見に行こうと誘うことにした。あなたが太郎なら、赤字で示した部分の内容を、どのようにボブに伝えるか。伝える言葉を、英語で書きなさい。


わかりましたか?

 

これが友人どうしだったり身内だったら、いきなり「お祭りに行こう。」と誘っても問題ないでしょう。

しかし、かしこまった場、例えば(新人研修のような設定で)お客様や取引相手に対していきなり「お祭りに行こう。」はないですよね。Bobも友人とありますが日本に不慣れな留学生なので、配慮する必要があります。いきなり「お祭りに行こう」では、やはり唐突です。

 

「一番最初に何を伝えるか?」  改めて考えてみましょう。

 

「お祭りに行こう。」あるいは「お祭りは楽しいよ。」などの前に伝えるべき情報・・・

 

それは・・・

 

 

 

「お祭りがある。」ということです。

自分にとっては当たり前のことなので、相手も当然そのことは知っているだろうと思って話を進めてしまってうまくいかなかった、特にうちわどうしの会話なんかではこういうこと、よくありますよね。

 

相手の立場に立ってみて、その話し相手がその件に関しどの程度情報を持っているかも気を使えるか、それを試す問題でした。今までの感覚の英語の問題とはやはり違います。

 

理想的な文の流れは・・・

 

「私たちの町にはお祭りがある。」→「そのお祭りでは、伝統的な日本のものが見られる。」→「お祭りに行こう。」  です。

 

それぞれの文は、易しめの英作文問題です。見事に「1つの文に、旧情報から新情報へと1テーマずつ」が実践されていて、その証拠に代名詞がきれいに使えます(この点について詳しい解説は、各教材で。)。

 

これは「新傾向」「新学力観」と呼ばれるものの一例です。

一番わかりやすいと思って、「英語」で紹介しましたが、他の教科でも同じです。

出題者(相手)の意図をいかにくみ取り、自分の考えをいかにわかりやすいように伝えるか、一言でいえばコミュニケーション能力が問われます。

 

入試もずいぶん変わったものだな、と思われた方も多いと思います。

 

ここで、富士宮教材開発からもう1つ問題提起があります。

本当に昔とは変わって、今このようになったのでしょうか?

実は、ちがいます。

 

例えば、先ほどの「お祭りがある。」を先に言わなければならないという例。

数学の証明で、いきなり「仮定よりAB=DE」などと証明を始めず、まず三角形に注目していること、またどの三角形に注目しているかを示すために「△ABCと△DEFについて」などと示してから証明を始めます。

 

すなわち、「新傾向」「新学力観」で身につけようという力は、今までの学習内容でも十分に身につけられるようになっていました。そして、そのような力を身につけた方も多数おられます。

 

しかし、ほとんどの場合あまりうまくいっていなかったことも事実です。

多くの指導の場で表面的な指導が行われ、学生さんたちが本来身につけられる能力も身につけられなくなってきたというのが現状でしょう。

 

「本来の理想に戻り、身につけるべき能力を身につけるようにしよう」というのが「新傾向」「新学力観」と呼ばれる問題と、私どもは解釈しています。

 

指導者側の能力が、大きく問われるようになってきているのは事実です。

もともと指導する側の能力不足で学問が形式化してしまったのを、何とか本質をとらえ学問を有効にしようとしているのです。

 

学校の先生というのは超多忙なので学校の先生だけに期待することはできませんが、この情報化時代の中、文部科学省も我々のような力と心のある民間事業が活躍することも期待しているのでしょう。

 

この「新傾向」「新学力観」と呼ばれる問題群の背後にある考え方や目的は、私ども富士宮教材開発がもっとも大切にしたいところであり、得意分野でもあります。

また、教育にかかわるものとして、もっとも貢献していきたい分野でもあります。


以上です。

ご意見・ご感想お待ちしています。

 

富士宮教材開発

代表 井出真歩


「新傾向」「新学力観」に関する分析・対処法も充実した、今年度(平成29年)静岡県学力調査テスト対策用の「過去問解説マニュアル」もあります。

よろしければ参考にしてください。

 

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